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タイトルの通り、高分子の合成(重合)の中でも比較的新しい技術である「精密重合」についてまとめた本です。高分子学会が発行している「高分子基礎科学One Point」シリーズの中の一冊です。高分子学会では、このようなシリーズをこれまでいくつか出していますが、新書より少し大きいサイズ(B6版)で、書棚や会社のロッカーの中でもかさばりません。 ページ数もそれほど多くないので、 関連する技術の全体を把握したいときや、「これ、どういうことだっけ?」ということをサクッと確認したいときに重宝しています。
さて、「精密重合」とは何でしょう。私なりの解釈も含んでいますが、解説してみます。高分子(ポリマー)はモノマーと呼ばれる低分子量の化合物が多数つながって大きい分子になったものですが、従来、とてもざっくりしたものでした。モノマーがつながる個数は確率に左右されるので、分子量に分布(ばらつき)があるのは当たり前でしたし、2種以上のモノマーがつながる場合、その順序も確率に左右され、モノマーの反応性が似ていれば基本的にはランダムにつながります(スチレンと無水マレイン酸の共重合などの例外もありますが、これはモノマーの反応性の違いが大きく影響しています)。このような確率性を減らすような重合法を「精密重合」というのだと考えます。精密重合の手法はいろいろありますが、精密重合によって、分子量がそろったポリマーや、モノマーの並び方が制御されたポリマーを合成することができます。分子量やモノマー配列のばらつきをなくすことによって、これまでのポリマーでは得られなかった機能が発現するのではないかという期待があります。
この本を職場の若手に見せたところ、「これはバイブルです。自分も買うので、それまで貸してください。」と、最上級の賛辞を頂きました(本は数日後にちゃんと戻ってきました)。この分野のエッセンスをコンパクトにまとめているため、読んで理解しやすいのではないでしょうか。おすすめです。
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ラジカル重合以外の精密重合について知りたい方には、こちらもあります。
![]() | 精密重合II:イオン・配位・開環・逐次重合 イオン・配位・開環・逐次重合 (高分子基礎科学One Point) [ 高分子学会 ] |
