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高分子

プラモデルの製造方法

と書きましたが、プラモデルの組み立て方ではありません。プラモデルの「部品」がどのようにつくられているか、知っていますか?

プラモデルの箱の中に入っているプラスチックの部品達は、「射出成形」という方法でつくられています。
「射出成形って何?」という方も多いと思いますので、この記事では射出成形について解説してみます。

射出成形とは、加熱して溶融したプラスチックを高圧で金型の中に充填し、金型内で冷やして固める成形法です。同じ形のプラスチック製品を大量に生産するのに適しています。プラモデルもそうですが、100円ショップなどで売っているプラスチック製品や自動車の内装に使われているプラスチック部品なども、射出成形で作られているものが大半を占めていると思われます。

射出成形をするには、「射出成形機」という機械を使用します。射出成形機は次のようなことをしています。

  1. プラスチックを溶融する。
  2. 融けたプラスチックを計量する。
  3. 計量したプラスチックを金型内に射出する。
  4. しばらくしたら金型を開き、冷えた成形品を取り出す。
    (この間に、次の成形の準備として2を並行して行う。)
  5. 金型を閉じる。(→3に戻る。)

1つの金型で複数の成形品をつくることもできます。また、成形品が大きいときは、その部品の複数の場所からプラスチックを流し込みます。そのような場合、金型の入口から成形品のところまで融けたプラスチックが流れる道が必要です。これが「ランナー」というものです。ランナーと成形品がつながっているところは、融けたプラスチックの入口であることから、「ゲート」と呼ばれます。

射出成形は、短い時間サイクルで成形品をつくることができる効率の良い成形法ですが、金型を二分割して成形品を取り出す都合上、適用が難しい形状、不可能な形状があります。逆テーパーは金型から外せませんし、ボールのような内部が空洞の閉じた形状も不可能です。平らな面に穴が開いたものは作れますが、側面に穴が開いた箱状のものをつくるには、金型の一部が動くようにするなどの工夫が必要です。プラモデルのように最終的に組み立てて形をつくる場合、個々のパーツが射出成形可能な形状になるように分割の仕方を考えて設計していると思われます。

このように、射出成形の場合、成形品の形状に制約があるわけですが、「これ、どうやって成形したんだろう?」と思う成形品もたまに見かけます。そのような時、射出成形で作られた成形品をよく見ると、成形品の形状や金型を設計した際の工夫が見えてきたりします。私が見ているポイントは、主にパーティングラインとゲートです。

パーティングラインとは、金型の合わせ目が成形品表面に転写されてできた線です。これを見ると、その成形品が金型内でどのように配置されているか、金型をどのように分割しているかがわかります。上で述べたように、成形品は金型から外せないといけません。金型内での配置をうまく工夫することによって、成形品が金型から外せるようにしているのですが、その辺の工夫の仕方がパーティングラインから読み取れるのです。ちなみに、プラモデルの部品でたまに見かける「バリ」は、金型の合わせ目がうまく合わなくなって、パーティングラインからプラスチックが漏れてできたものです。

ゲートの位置や形状は、成形のしやすさに影響します。ゲートは、なるべく跡が見えないような場所に配置されます。また、ゲートが小さい方が跡も見えにくいです(そのような小さいゲートを「ピンゲート」といいます。)。しかし、ゲートが端の方にしかなかったり、ゲートが小さすぎたりすると、融けたプラスチックが金型の中を満たせなくなり、成形不良になります。そのバランスのとり方も、金型設計の重要なポイントです。

以上、簡単ではありますが、射出成形の方法、そして、射出成形でできた成形品を見てわかることについて書いてみました。プラモデルの部品などのプラスチック製品に対する見方が、少し変化したでしょうか。

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