Eterna Esploristo

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高分子

ガンプラ、おそるべし

今回もプラモデルの話です。もう10年くらい前の話ですが、バンダイってガンプラに結構すごい技術をつぎ込んでいると感じたのです。今回はそのお話をします。

当時、ものすごく久しぶりにプラモデルをつくろうと思ったのです。そのころ、「ガンダム00」が放送されていて、これまたすごく久しぶりにガンダムシリーズの放送を見てはまってしまったのが一つの理由です。で、購入したのがこちら。武器も多くていろいろ遊べそうですよね。ちなみに、ノーマルのダブルオーガンダムのパーツはそのまま入っていますので、どちらもつくることが可能です。

この「1/144 ダブルオーガンダム セブンソード/G」の 箱を開けてびっくりしたわけです。

前の記事でも書きましたが、プラモデルは射出成形で製造されています。射出成形はプラスチックを溶融させて金型内に高速で充填する成形法ですので、基本的には1つの成形品は1種類のプラスチックでできています。100均のプラスチックのコップや皿やかごも、みんなそうですよね。つまり、1枚のランナーは1色なのが普通です。それまで私が見たことのあったプラモデルは、もちろん例外なく、1枚のランナーは1色でした。しかし、久しぶりに見たランナーは、なんと4色だったのです。金型に2種類のプラスチックを充填する「2色成形」というものがあるのは、当時でも知っていましたよ。でも、それよりさらに2色多い「4色」ですから。一体どんな成形機を使っているんだろう、と思うと同時に、射出成形技術の最先端は、もしかしたらガンプラかもしれない、と感じたのです。

射出成形における多色成形の方法について解説します。射出成形機には、「シリンダー」と呼ばれる、プラスチックを溶融して計量する部分があります。成形するときはシリンダーを金型に付けて、溶融したプラスチック(以下、溶融樹脂といいます)を金型内に充填します。多色成形の場合、複数の種類の溶融樹脂を金型内に入れるため、シリンダーもプラスチックの種類の数だけ必要です。つまり、2色成形なら2本のシリンダー、4色成形なら4本のシリンダーが、成形機に搭載されています。そして、これらのシリンダーから金型内に溶融樹脂を射出するのですが、射出する溶融樹脂の量、温度、圧力、タイミングをすべてのシリンダーについてきちんと制御しないと、溶融樹脂の流れが変わってしまい、境目がずれてしまいます。下手をすると、パーツの色が本来とは違う色になってしまいます。ちなみに、射出成形で溶融樹脂を充填するのにかかる時間は秒単位。これをきちんと制御しているのですから(しかも4つ分!)、すごいとしか言いようがありません。昔のプラモデルとは違って、バリなんてありえないわけです(バリが出るということは、その分、溶融樹脂をロスしますから、色の境目のずれにつながります)。おそらく、4色成形なんてやっているところは、他にはないのではないでしょうか。色分けのニーズが強いガンプラならではでしょう。

この多色成形を支えているのが「電動式射出成形機」だと考えます。かつて(20世紀末ごろ)私が使ったことのある射出成形機は「油圧式」と呼ばれ、油圧によって金型を開閉したり溶融樹脂を射出したりする方式でした(当時はこれが主流でした)。この方式は、油圧による大きな力で溶融樹脂を一気に射出できるものの、作動時の油圧の変動などのため、射出速度などの細かい制御は困難です。一方、当時世の中に出始めた電動式射出成形機は、サーボモーターで金型の開閉や溶融樹脂の射出を行うため、正確な動作が可能です。そのころはまだ電動式は非力だったため、油圧式が主流だったのですが、今では電動式がかなり普及しているようです。先に述べたように、射出条件を細かく制御する必要のある多色成形は、油圧式ではおそらく歩留まりを上げることができず、電動式射出成形機がこの世に出ることによって現実的に使える技術になったのではないかと考えます。

バンダイホビーセンターオリジナル電動式4色射出成形機[na][バンダイ(BANDAI)]

今回、この記事を書くにあたり、ガンプラにおけるモノづくりを取材したホームページを見たのですが、最近はパーツそのものが多色のものができているんですね。境目がランナー部分ではなくパーツ上に来るなんて、シビアすぎます。かなり細かいところまで成形条件を制御できているはずです。しかも、流動解析ソフトでは解析できないので、流動解析をしていないとのこと。恐るべし、バンダイ。

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